世の中は「売り手市場」。しかし、中小企業に人が来ない。リクルートワークスの調査によると、新卒採用では求職者が大企業に集中している。2020年3月卒業予定の大卒求人倍率は、従業員5,000人以上の大企業が0.37~0.7倍。対して300人未満の中小企業が8.62倍。実に約10倍もの差があるのだ。
国内企業の99.7%を占める中小企業が厳しい採用難に直面していることがうかがえるが、その原因は何か。それを「知名度の低さ」に求める言説が見られるものの、根本的な原因は他にあるといえる。実はやり方次第で、中小企業が大手企業よりも有利に採用を進めることができるようになるからだ。力を入れるべきは「採用コスト」の見直しである。
採用活動にかかる人件費、会社説明会の開催費、求人広告費……。時間もお金も限りがある中、中小企業がこれらの採用コストを抑えて、かつ優秀な人材を集めるための具体的な方法とは――。本稿では多角的な観点から、中小企業における新しい時代の具体的な採用方法について考察していく。
※求職者1人に対して、何人分の求人があるかを示す指標。たとえば、求職者1万人に対して求人が8,000人の有効求人倍率は0.8倍で「就職しづらい」状況だが、求人が2万人なら有効求人倍率は2.0倍と「就職しやすい」状態にあるといえる。
制作:有限会社ノオト+朝日新聞デジタルスタジオ
採用活動にまつわる複数の調査から、中小企業の新卒・中途採用にかかる負担が浮き彫りになっている。『2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査』によると、全国の企業が前年度の新卒採用にかけた採用の総額コストは平均557.9万円、入社予定者1人あたりの採用コストは平均48万円だった。
中途採用の採用コストは更に大きい。同じくマイナビの『中途採用状況調査(2018年)』によると、中途採用にかけた年間の総額コストは平均716.9万円、1人あたりの採用コストは平均65.8万円。中途採用の方が高額になるのは、新卒採用のように会社説明会を行わない分、転職潜在層に自社の情報を届ける施策が必要になり、「人材紹介費」や「求人広告費」のコストが増加しやすいためだ。
また、『2018年度マイナビ企業人材ニーズ調査』によれば、新卒・中途の正社員雇用の採用コストについて、前年と比較して4割以上の企業が「コストが増えた」と回答している。上がり続ける採用コストの増加は、多額の投資ができる企業を除き、多くの中小企業にとって痛い出費だろう。
先述の通り、中小企業の採用は空前の「売り手市場」だ。多くの採用コストをかけて内定を出しても、内定辞退となるケースが少なくない。給与や福利厚生などの待遇が良く、ネームバリューのある大手企業から内定が出れば、就活者の意向は簡単に覆ってしまう。そうならないように、中小企業の採用活動には、「選ばれる会社」になるための施策が必須といえる。これについては別途、説明する(→採用コストを抑える「採用ブランディング」とは)。
採用コストを見直すためには、まず「自社の採用活動のどこに、どれくらいのコストをかけているか」を知る必要がある。ここで採用コストとは、実際どの費用のことを指すのか。「内部コスト」と「外部コスト」の2つに分けることで、採用コストの全体像を把握しやすくなる。
内部コストは、採用担当者の人件費や面接者の交通費など、内部に発生するコスト。一方、外部コストとは、求人広告費や会社案内・リーフレットの制作費など、外部に支払うコストを指す。
外部コストは実際にかかったコストが明確でわかりやすいが、一方で内部コストは、採用活動の準備や採用実務に費やした時間を数値化するのが難しく、かかったコストが不明瞭になりがちでもある。外部コストだけを見て低予算で採用をしたつもりになっても、実は人事労務担当者に多大な負担を強いていることがあり得る。経営層は内部コストにも目を向けないと、持続可能な採用活動が難しくなるだろう。
内部コストと外部コストの総額を、実際に採用した人数で割ると、1人あたりの雇用単価が計算できる。先に述べたように、新卒採用の平均コストは1人あたり48万円、中途採用は65.8万円。これらの平均採用コストと比べて、自社の採用コストは高いだろうか、低いだろうか。高い場合は採用コストの総額を抑えるために、低い場合もさらに効果的な追加施策の予算を捻出するために、後述する「採用コスト削減『5つのアプローチ』」を参考にしてほしい。
採用活動にかかっているコストを把握したら、実際にその金額と採用実績のバランスが取れているか一つずつ確認していこう。採用コストを削減するためには、「採用フローの無駄をなくすこと」と「内定辞退を少なくすること」が重要だ。この2点を軸にして、採用コストを削減する方法を検討してみよう。
まずは一般的な採用フローの中で、「無駄」になっているパートを洗い出してみる。
さて、ここまでは一般的な採用フローについて検討してみたが、実はここに落とし穴がある。「採用フロー」は図のように「求人情報を公開」から始まっていると思われがちだが、採用コストを削減する上で、その前にある「求人情報を整理する」段階も重要になってくるのだ。
例えば「どんな人材を採用したいか」という問いに、「元気で明るく、素直な人」と答えていないだろうか。条件を抽象的かつ多く出すほどエントリー数は増加するかもしれないが、その分だけ選考に時間を取られてしまう。たくさんの人を集めることも一つの戦略ではあるが、状況によっては求める人材の的を絞ることを意識したほうが、内部コスト削減につながる。
そのためには、求める人材像をより具体化しておかなければいけない。よく言われる「コミュニケーション能力がある」でもまだまだ抽象的。コミュニケーション能力の中でも説明力やプレゼン力が重視されるのか、顧客のニーズを引き出す聞き方が上手なのか、採用したい人物像を細かく設定してみよう。
会社説明会の会場レンタル費や採用面接を担当する社員の労力は内部コストだ。会場の広さや立地の良さにこだわるほど、面接の回数を増やせば増やすほど、コストは膨れ上がる。また、予算不足から会社説明会の場所や回数が限定される中小企業は、遠方に住む就活生へのアプローチが十分とは言えないだろう。
そこで中小企業にこそ導入したいのが、会社説明会や面接のオンライン化だ。大学生はほぼ全員がスマートフォンを使いこなしており、中途採用の応募者もインターネットに接続できるデバイス(PCやタブレット、スマホなど)を持っていることがほとんどだ。ネットを活用すればより多くの人に情報を届けることができ、かつ準備時間や場所にかかるコストの削減につながる。
サイバーエージェントは2019年卒の採用で、それまで膨大な準備時間と回数を費やしてきた従来の会社説明会をなくし、オンラインでいつでもどこでも会社の説明が見られるように動画を制作・公開した。動画は採用コースごとに分けられており、会社概要と各コースの仕事内容などを10分ほどで紹介している。会社説明を動画配信することで、学生と企業の双方の負担を軽減し、時間の有効活用を実現したといえる。
もちろん、会社説明の動画撮影・編集の費用はかかるが、複数会場・複数回の会社説明会を開くことを考えればトータルでコストダウンになり、より多くの新卒学生に見てもらう貴重な機会にもなる。中小企業でもこういった施策を検討する価値はある。
会社説明会だけでなく、面接のオンライン化も積極的に考えたい。応募者は面接会場に足を運ぶことなくPCやスマートフォンを使ってオンライン面接ができるため、地方在住の就活学生にとってエントリーの間口は確実に広がる。もちろん対面での面接に比べて細かな仕草などは確認しづらいものの、これからの時代にはむしろ、ネットを介した会議が増えることは想像に難くない。オンライン会議でどんな印象を受けるのか、それをつかめるのも1つのメリットだ。例えば1次面接はオンライン、2次面接は対面と使い分けることで、移動コスト(交通費の支払い)の削減にもつながる。
ITベンチャーを中心にここ最近、国内で浸透しつつあるのが「リファラル採用」だ。リファラルは日本語で「紹介・推薦」という意味で、自社ですでに働いている社員の紹介や推薦によって、いわば人材の“一本釣り”をすること。アメリカではGoogleやFacebookといったIT企業を中心に、約85%の企業で導入されている。
リファラル採用は友人・知人を介するので、求人広告の出稿や会社説明会などの採用フローが不要になる。つまり、採用にかかる費用における内部コストと外部コストの両方を削減できるのだ。
「類は友を呼ぶ」の言葉があるように、リファラル採用の応募者は紹介者と同じような特定分野の専門性や職業観を持ち合わせている傾向がある。結果的に採用につながる確率は上がり、入社してすぐ辞めてしまうリスクは下がる。
そもそもリファラル採用は、中途採用に限らず、新卒採用でも有効だ。入社1~2年目の社員であれば、出身校の後輩や所属していたゼミ・サークル・学生団体の仲間、浪人や留学をして大学卒業時期がずれてしまった同級生とつながっているもの。そうした人材に効率的にアプローチできるのも、リファラル採用の大きな魅力といえる。
より効果の高いリファラル採用を実施するには、紹介者(社員)へのインセンティブを設定したり、知人を誘いたくなる社内環境・労働条件を整えたりするなど、会社の仕組みや制度を大胆に変更していくことになる。本格的にリファラル採用を導入することになれば、結果的に会社の経営方針にも大きな影響を与えることは意識しておく必要がある。
近年注目を集めている「ソーシャルリクルーティング」は、ブログやSNS(Twitter、Facebook、YouTubeなど)を使った採用活動である。企業によって活用の方法はさまざまだが、一番のメリットは企業が求める人材に向けて採用情報を届けられることだ。
HR総研が発表した『2019年新卒採用動向調査』によると、採用戦略においてターゲット大学を設定し、特別な施策を講じている企業は全体の39%。大企業に限れば半数がターゲット大学を設定しているが、中小企業では3割程度にとどまっている。
ここでいうターゲット大学とは、特定の大学からのみ採用をするという意味ではなく、あくまでも採用のときに重視・優遇する傾向にある大学、という意味。その学生により効率的に採用情報を届けるために、SNSのターゲティング広告を活用するのはどうだろうか。
例えばFacebookには、特定の学校や業界に絞って広告を表示する仕組みがある。自社の採用情報を「○○大学の学生に」「○○業界で働く社員に」ダイレクトに届けることができるということだ。同様に、特定の趣味や地域に絞って広告を出すことも可能だ。このように、就職潜在層へアプローチすることで、自社の採用ページへ誘導しやすくなる。広告の出稿頻度にもよるが、数多ある求人サイトに求人広告を掲載するよりも、総じてコストを抑えられる。
他にも、自社と親和性の高いキーワードについて言及しているアカウントを検索できたり、候補者のSNSアカウントを通じて人間性や属性を調べたりすることもできる。入社後に戦力となるのか、活躍できる人材かどうかを見極めることで、採用のミスマッチ防止にもつながるだろう。
事業者なら誰もがその存在を知っているはずなのに、大企業やIT系企業ほど利用率が低いハローワーク。中小企業にとって身近な採用ツールだが、まだまだ活用していない企業が多いのではないか。求人を出すためには、事業者みずから直接管轄のハローワークに出向く必要はあるものの、地域にいる求職者に求人を見てもらいやすく、長期間にわたって無料で求人を掲載できるのは大きなメリット。中小企業がぜひ、活用するべき制度だ。
『公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績(平成31年1月)』によると、2017年度の新卒応援ハローワーク利用者数は約44万9000人で就職件数は10.3万件、わかものハローワーク(おおむね45歳未満)利用者数は約22万1000人で就職件数は9.8万件。前年度の同資料と比較すると、新卒応援ハローワークは利用者が6.4万人減ったものの、就職件数は5000件増加している。わかものハローワークは利用者が3000人増えたが、就職件数は7000件減少。しかしながら9.8万件と高水準を維持している。
ハロワ=アナログと思われがちだが、実はハローワークインターネットサービスを利用すれば、ハローワークに登録していない人でも求人情報を閲覧できる。無料でより多くの人の目に触れる可能性を考えれば、採用コストのかからない施策の一つとして活用することもあり得るだろう。
「採用コストを下げる」というと、費用を「節約する」ことに目が向けられがちだ。しかし、払った費用を「取り戻す」方法もある。それが「助成金」だ。
国や自治体は雇用に関する助成金をいくつも用意している。中途採用を支援する助成金やトライアル採用を促進する助成金など、目的にあった助成金が意外とそろっているが、これを詳しく把握している経営者は少ないかもしれない。ここでは厚生労働省が提供している雇用に関する助成金の中から、新卒・中途採用を対象とした制度を一部、紹介する。活用すれば、採用コストの総額を抑えることができる。
※助成金を利用するには各条件を満たす必要があります。詳しくは厚生労働省のサイトをご確認ください。
中途採用の発展に向けた取り組みを支援する助成金。
就業経験不足や障害などで、安定的な就職が困難な求職者の雇用を促進する助成金。
有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者など、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進する助成金。
中小企業は、求人の応募数が増えなかったり、内定を出しても辞退されてしまったりと、採用戦線ではどうしても不利になる。しかし冒頭で触れた通り、根本的な原因は「知名度の低さ」ではない。
『【2019年卒版】就活生の「働き方」に関する意識調査アンケート』によると、「どのような企業に魅力を感じるか」の質問に対して、1位「社内の雰囲気」、2位「成長できる環境がある」、3位「将来性がある」という回答が寄せられた。意外なことに、「知名度」は17位。つまり、知名度が低い中小企業であっても、求職者に選ばれるチャンスが大いにあるということだ。
1位~3位の回答は、すべて働く環境に言及されている。働き方改革が叫ばれる昨今、働く環境の改善に力を入れている中小企業はとても多い。問題は、中小企業のそうした取り組みが、求職者に知られていないことだ。自社の職場環境をどのようにアピールすれば、求職者に選ばれる会社になるのか。そのために必要なのが「採用ブランディング」だ。
ブランディングとは、一般に「自分(自社)らしさ」は何かというイメージを定め、共感や信頼を得ることでその価値を高める活動を指す。つまり、ブランド名やロゴマークを見ただけで、そのブランドの特徴や魅力が伝わるということだ。これを採用に置き換えると、会社名や会社のロゴマークを見ただけで、事業内容や働く環境がイメージできるようにする、ということになる。
採用ブランディングをする前に、まずは自社の企業理念や価値を明確にしておこう。そうすることで、自社のアピールポイントが浮かび上がり、活躍人材像が見えてくる。
ここで気をつけたいのは、会社の価値を給与や福利厚生などの採用条件に置かないことだ。条件面に惹かれて集まった人材は、他に良い条件の会社があればそちらへ移ってしまい、内定を辞退する可能性が高い。または入社しても、人間関係や業務内容のミスマッチが起こり、すぐに転職してしまうかもしれない。
こういう事態になると、かけた採用コストや教育コストがロスになってしまう。だからこそ、自社の企業理念と価値を創造し、そこに共感を得ることが重要だ。
会社の事業内容や規模がよくわからず、外からどんな職場なのか見えない企業を選ぶ就活生・転職希望者はほとんどいないだろう。リクルートキャリアの調査によると、転職活動中に知り得なかった情報トップ3は「配属される部署の風土や慣行」「配属部署の職場長・メンバーの特徴」「将来のキャリアパス」。つまり、求職者は会社を選ぶ際、どんな環境で働くのか、どんな人と働くのか、どう成長できるのかの3点を重視しているのだ。
求職者のニーズを踏まえ、企業はどんな情報をどのように開示するべきだろうか。さまざまなウェブサービスを活用し、すでに取り組んでいる会社の事例を見ていこう。
※事例は2019年9月時点の情報です。
「企業の情報開示」の王道といえば、やはりコーポレートサイト内でのブログ運営だ。たとえばLINEは自社ブログとして『LINE HR BLOG」『LINE Engineering』の2つを運営している。
『LINE HR BLOG』は、社員の働き方や社内チームの取り組みなど、自社にいる「人」にフォーカスしたコンテンツを展開している。一方、『LINE Engineering』で取り上げているのは、主に技術者向けの情報だ。
求人サイトは募集年度があるため、採用期間の終了=契約期間切れによってコンテンツは消えてしまう。毎年の求人サイトへの支払い額を合計すればかなりの負担になるが、それが形に残らないというのは、考えてみればもったいない。一方、自社ブログにコンテンツをアップしていれば、検索などによって過去の大切な記事をいつでも見てもらうことができる。こういった蓄積こそが、企業ブランディングにつながっていく。
LINE HR BLOG:http://line-hr.jp/
LINE Engineering:https://engineering.linecorp.com/ja/
自社の企業理念や事業内容の認知拡大を図り、オウンドメディアを立ち上げる企業が増えてきている。メルカリが運営するオウンドメディア『mercan(メルカン)』は、同社のバリューや人事施策、イベントリポート、エンジニア向けの情報、会社の日常など、多種多様なコンテンツを高い頻度で発信。常に応募者の目を意識し、国民的サービスとして普及しつつあるメルカリを「働く場」として認知してもらう役割を果たしている。
mercan:https://mercan.mercari.com/
オウンドメディアなどでは手間のかかる情報発信が、手軽に、さらにコストを抑えてできるのはSNSの大きなアドバンテージだろう。数ある企業アカウントの中でも、成功事例として挙げられるシャープの公式Twitterは、フォロワー数が実に58万弱。同アカウントは自社の宣伝だけでなく、SNS担当者の主観的な投稿が人気となり、「シャープさん」の愛称で親しまれている。人間味あふれる投稿で日々ファンを獲得することで、求人情報を投稿した際に自社に好意的な求職者へアプローチできる。
シャープTwitter公式アカウント:
https://twitter.com/SHARP_JP
Wantedly Visitは企業と求職者をつなげるビジネスSNS。 Wantedly Visit内に自社ページを作成することで、会社の紹介文を書いたりブログを運営したりすることができる。求職者はそれらの情報を見て、興味のある企業にアポイントを取りつけ、また企業側も求職者をスカウトできる仕組みだ。ウルトラテクノロジスト集団のチームラボは、同ブログで社員インタビューやインターンシップ、セミナーなどの情報を積極的に公開。多くの求職者から共感を得ることで、優秀な人材の採用につなげている。
チームラボのWantedly Visitブログ:
https://www.wantedly.com/companies/team-lab/feed
社内外の人間の交流を目的とした企業主催の懇親会。食事をしながら社員と参加者が直接コミュニケーションできるため、会社および社員のことをダイレクトに知ってもらうきっかけになりやすい。サイボウズ株式会社は、自社社員のトークセッションを交えたミートアップを定期的に開催し、社内の情報発信をしながら参加者と交流を深めている。少人数であればさほどコストをかけずに開催できるため、フットワークの軽い中小企業が採用活動におけるひとつの手段としてミートアップを取り入れている。
長い歴史をもつ業界から新興のIT産業まで、一口に中小企業と言ってもさまざまな会社がある。予算やマンパワーに合わせて、採用ブランディングのような新しい試みにチャレンジしてみてはどうだろうか。その土台を一度しっかり作れば、数年後、十数年先の採用にも生かせる強力な武器になるはずだ。
中小企業の採用において、究極の理想形とは何か。その答えは「勝手に人が集まってくる会社」になることだ。これが実現できれば、採用コストは限りなくゼロに近づいていくだろう。そのためにも、中小企業はこれまでの採用フローを見直す必要がある。
採用フローを見直す場合、まず採用コストの相場や実際にかかる費用をしっかり把握しよう。何にいくらのコストをかけているのか、その金額は妥当なのか。既存の採用フローを最適化していく作業は、今からでもすぐできる。注意するべきは、「無駄」を取り除かないまま、新しい施策を導入しないこと。採用コストがかさむだけでなく、採用担当者の負担も増えてしまうからだ。その上で、どんな人材がほしくて、どんなアプローチをするべきか。これを決めてしまえば、あとは行動するのみだ。
知名度と潤沢な資金を持つ大企業との採用競争に負けず、中小企業が人材不足を解消するには、独自の採用フローを開発・実行していくしかない。しかし、これは本来、日本のものづくりが得意な「カイゼン」でもある。今日この瞬間からでも、採用に対してPDCAを回してみてはいかがだろうか。
<参考文献>
青田努(2019年)『採用に強い会社は何をしているか—52の事例から読み解く採用の原理原則』ダイヤモンド社
深澤了(2018年)『「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング』幻冬社
近藤悦康(2018年)『社員20人なのに新卒採用に1万人が殺到 日本一学生が集まる中小企業の秘密』徳間書店
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